より魅力的な広告で他社よりも優れている点を訴求したり、割引サービスやキャンペーンを大きく見せたいのが事業者の思惑ですが、内容によっては景品表示法のガイドライン違反となり消費者庁からの措置命令が下ります。
こちらの記事では景品表示法について理解を深めたい方向けに、ガイドライン違反事例を交えつつ景品表示法の内容をわかりやすく解説しています。
景品表示法の概要
景品表示法は正しくは不当景品類及び不当表示防止法といい、各種広告等の表示が適正であるか(虚偽広告や誇大広告でないか)、また景品類によって構成な競争が阻害されたり消費者がサービスや商品を選択する際に不利益が生じないようにする事を目的とされています。
1960年に牛肉の缶詰と称して販売していた商品が鯨の肉を使用していたことが発覚する事件が起こった際に罰する事が出来る法律がなかったことからこの法律が制定されたと言われています。このように虚偽の内容で消費者をだますような広告・表示をしてしまうと罰せられると考えても間違いありません。
現在景品表示法は「懸賞制限告示」と「一般消費者表示」に分かれ各項目にルール設定がされています。
現在は景品表示法違反が認められた場合、措置命令(違反物の撤去・再発防止・課徴金の徴収)が行われ、課徴金は過去5年までに景品表示法に違反する表示によって稼いだ利益の3%に相当する金額となります。
懸賞制限告示とは?
懸賞制限告示とは、「取引に付随して懸賞を行い、景品類を提供する」ことを指します。具体的には
(1)顧客を誘引するための手段として
(2)事業者が自己の供給する商品・サービスの取引に付随して提供する
(3)物品、金銭その他の経済上の利益
上記3点を満たした場合に懸賞及び景品類の提供とみなされます。
懸賞はくじ引き等のランダム性で優劣をつけ景品類を提供する「一般懸賞」と、複数の事業者で懸賞を行う「共同懸賞」、またランダム性がなく提供される「総付景品」の3つに分類され、各分類には景品の金額に制限があります。限度額を超えた場合は消費者庁から改善命令を求められ、会社全体の景品類の提供に制限もしくは禁止命令がかかる場合があります。
最高額 | 総額 | |
一般懸賞 | 取引額が5,000円未満の場合は取引額の20倍まで 取引額が5,000円以上の場合は10万円まで | 懸賞に係る売り上げ予定額の2% |
共同懸賞 | 取引額にかかわらず30万円まで | 懸賞に係る売り上げ予定額の3% |
総付景品 | 取引額が1,000円未満の場合は200円まで 取引額が1,000円未満の場合は取引額の10分の2まで | ー |
一般消費者表示とは?
商品やサービスに関する表示全般を指し、パンフレットやチラシ、ポスター等の紙媒体以外にもweb広告やダイレクトメール等も制限の対象となります。景品表示法では複数の行為を禁止しています。一項目ごとに確認していきましょう。
優良誤認表示とは?
自己の供給する商品・役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると誤認され、または事実に相違して競争事業者に係
わるものよりも著しく優良であると誤認される表示の事を指します。
2003年には不実証広告規制が導入され、優良誤認表示と判断される表示に関しては合理的根拠の提出要求が行われます。合理的な根拠の判断基準として、関連する学術、または産業界の一般的に認められた方法、もしくは専門家多数が認める方法で客観的に判断されたものである必要があります。
優良誤認表示は後述の有利誤認表示と異なり、商品や役務の「品質・規格」について実際のものよりも優良だと誤認させる表示です。
有利誤認表示とは?
商品、または役務の販売価格よりも高い価格(以下、比較対象価格と呼びます)を比較対象として表示しあたかも他の条件で購入・契約するよりも安いと表飛車に誤認させる表示を指します。このように2つの価格を併記して表示する方法を二重価格表示と呼び、比較対象価格については制限があります。
①過去の価格を比較対照価格とする場合
過去の販売価格から比較対象価格を設定する場合は比較対象価格の販売期間をセール開始日を基準に判断します。
・比較対照価格は過去8週間の過半を占める期間で販売していた価格か。
・セール開始日が比較対象価格で販売した最終日から2週間以上経過していないか。
・セール期間が2週間以上になっていないか。
上記3点を守っていれば二重価格表記をすることができます。
②将来の価格を比較対照価格とする場合
将来の価格で販売する事が確実でない場合、表示価格の根拠を提出することが難しく一般的にはおこなうべきではありません。判断基準としては一般的な価格変動の状況等から鑑みられます。
打消し表示について
一般的な強調表示(チラシ等で大きく見出しとして訴求している文言)は消費者には無制約・無条件に取引に該当すると受け止められやすいため、打消し表示を使用して例外的な条件や制約条件を消費者に分かりやすく記載する必要があります。このわかりやすくというのがポイントで、打消し表示は配置場所や文字の大きさなどの一定のルールがあります。下記に大前提となる部分を抜粋します。
文字の大きさ | 一般消費者が実際に目にする状況において適切と考えられるサイズ ※A4チラシでは一般的に8pt程度以上 |
強調表示とのバランス | 強調表示が大きすぎる等で消費者が気付かない事がないバランス |
配置箇所 | web:強調表示箇所から1スクロール以内 紙媒体:強調表示の直下、もしくは同一ページ |
背景色との区別 | 背景と同化するようなことがない表示 |
その他 | その他の注意事項と打消し表示は区別する事が望ましい※注意事項をページ下部に一括して掲載する等は避ける 一般消費者が理解できない内容はNG |
打消し表示に関しては具体的にこのラインを超えるとルール違反等の明確なものがありませんが上記から大きくそれた広告表示にならないように注意する事が必要です。
通信業界で起こったガイドライン違反
光回線販売事業者の例
平成29年3月24日、消費者庁公正取引委員会よりインターネットサービスを提供する事業者に対し、景品表示法に違反する行為を認めるとし措置命令を行いました。
(web広告において特定期間のみの割引と表示しているものが実際は終了翌日から日付を更新することで同様の割引を2年間にわたり行っていた。)対象役務の取引条件について、それぞれ、実際のものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示である旨を確認するとともに、再発防止策を講じて、これを役員及び従業員に周知徹底すること。
割引は常時行っていたが期間限定のように見せる事で消費者に誤認を生んだという事で有利誤認の案件になっています。
まとめ
いかがだったでしょうか?景品表示法の内容は他にも多く消費者庁のホームページで確認ができますし、違反事例などで検索をすると過去の事例も出てきます。また小売店や販売代理店は非常に厳しい目線で見ている企業も多く、企業によってレギュレーションのラインが異なるかと思います。ふと制作した訴求物で大きな損害を被らないようにガイドラインに注意をした運用を心がけましょう。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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